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積層造形法で製造されたインコネル718の3D EDS/EBSDを用いた三次元組織評価

はじめに

アディティブ・マニュファクチャリング(AM)、または3Dプリンティングは、従来の製造法に比べて手頃な価格でニアネットシェイプの構造を製造でき、近年成長著しい製造技術である。さまざまなAM処理方法論には、レーザーまたは電子ビーム粉末床溶融結合、指向性エネルギー堆積、バインダー噴射、熱溶解積層法などがある。これらの各手法には、プリント部品の微細組織を決定する幅広い造形パラメータがある。この微細組織は、使用中の部品の材料特性と挙動を定義するのに役立つ。

電子後方散乱回折法(EBSD)とエネルギー分散型分光法(EDS)は、これらの材料の微細組織を評価するための電子顕微鏡用ツールであり、加工-微細組織-特性の関係を理解することに役立つ。この研究では、航空宇宙用途に使用されるニッケル-クロム基超合金であるインコネル718について、同軸ワイヤーフィードレーザー金属析出法を用いて製造された材料の微細組織を、3D EBSDとEDSを用いて解析した。

考察

EBSDとEDSのデータは、Thermo Fisher Scientific社製 Helios XeプラズマFIB-SEMに取り付けたEDAX Velocity EBSD検出器とEDAX Octane Elite EDS検出器で収集した。プラズマ集束イオンビーム(FIB)により、高速での試料加工が可能となり、より大きな体積の分析が可能になった。3D収集の場合、EBSDとEDSデータはルーチンの2D分析と同じ方法で試料から収集され、エリアとサンプリングステップサイズが収集パラメータとして定義される。EDS データは、EBSDと同時に収集することができる。その後、FIBで試料をスライスし、EBSD-EDS収集を新しい面で繰り返す。

ビルド(Z)方向を基準に色分けされた3D IPF方位マップ
図 1. ビルド(Z)方向を基準に色分けされた3D IPF方位マップ

電子顕微鏡とEDAX取得プロセスの両方を制御する統合ソフトウェアが、ミリングと分析の両方のジオメトリに対して試料の位置決めとアライメントを繰り返す。この例では、各2次元EBSDスキャンのステップサイズを200 nm、スライス厚を100 nmとして、分析体積を約60 μm<sup3<>とした。スライスごとに反射電子(BSE)像を収集し、1スライスごとにEBSD-EDSデータを収集した結果、EBSD-EDSデータは200 nm2ピクセルになった。Velocity検出器が1,000ポイント/秒(pps)でEBSDデータを取得する場合、1サイクルあたりの収集時間は、各ミリングスライスで60秒、BSEイメージングで15秒、EBSD-EDSマッピングで90秒であった。総収集時間は600スライスで約48時間であり、さらにポジション間の試料移動とアライメント調整に時間が必要となる。このような時間が必要となるため、高速でのEBSDデータ収集ができることは重要である。このケースでは、EDSのX線量を増やすために1,000ppsで測定を行った。インコネル718試料では、EDAX Velocity Ultra検出器で最大6,700 ppsの指数付けを行うことができ、1スライスあたりの収集時間と全体の収集時間の両方を大幅に短縮できる。 </sup3<>

3D回転表示とさまざまなスライスプレーンの選択
図 2. 3D回転表示とさまざまなスライスプレーンの選択

3Dデータが取得されると、OIM Analysis™は、3Dボリュームの包括的でカスタマイズ可能な解析を可能にする一連のツールを提供する。OIM Analysisは、測定された微細構造の結晶学的および組成的性質を可視化するために、最も幅広いマップおよび粒界の可視化オプションを提供する。マップのタイプとカスタマイズされたプリファレンスを保存するOIMテンプレートファイルとして条件を保存できる。これらのテンプレートファイルをOIMバッチ・プロセッサーで使用することで、各スライスのデータを同一の条件で連続的に解析し画像ファイルを生成することができる。バッチ処理では、測定データの位置合わせ、データの切り出し、データのクリーンアップなどの機能も使用可能である。最後に、OIM Analysisにはオプションで3D可視化モジュールがあり、2Dスライスを3Dボリュームレンダリングに相関させ、結晶の大きさや局所的な方位差などの材料微細組織に関する3D統計データを生成することができる。

図1は、ビルド(Z)方向を基準に色分けされた3DのIPF方位マップである。3Dビジュアライザーを使用すると、このボリュームを3つの主要な基準方向のいずれかに回転させてスライスすることができる。これにより、材料を通した微細構造の変化を可視化することができまる。図2は、このボリュームの回転図と、異なるスライス面の選択を示している。測定された方位をスライス間で相関させることにより、OIM Analysisは3Dで結晶粒を計算することができる。これにより、3D粒度分布が得られるだけでなく、個々の結晶粒を選択して可視化することもできる。図3は、この微細構造から得られた2つの異なる結晶粒を示している。図3aは典型的なほぼ等軸の結晶粒を、図3bはより薄い双晶結晶粒を示している。

この微細構造から得られた2つの異なる結晶粒 a)は典型的な均質結晶粒、b)はより薄い双晶結晶粒。
図 3. この微細構造から得られた2つの異なる結晶粒 a)は典型的な均質結晶粒、b)はより薄い双晶結晶粒。

局所的な方位差も3Dで調査できる。図4は、3Dにおける Kernel Average Misorientation(KAM)マップを示す。このマップから、粒界付近や析出物内で、局所的に方位差が大きくなっていることがわかる。これは、図5に示すように、同時に収集されたEDSデータと合わせて表示・解析することができる。このマップでは、RGBマップは赤色をNbのEDSカウント強度、緑色をTiのEDSカウント強度、青色をNiのEDSカウント強度で色分けしている。このEDSデータは、Tiの大きな析出物とNbが富んだ小さな領域の存在を示している。このデータの解析に関する追加情報は、Additive Manufacturing 66 (2023) 103458 (https://doi.org/10.1016/j.addma.2023.103458) に掲載されている。結晶粒形態の3D解析に関する詳細は、録画されたEDAXウェビナー“Combining EBSD with serial-sectioning to investigate additively manufactured microstructures” (https://www.youtube.com/watch?v=Bhoj86EYAyo).で説明されている。

KAMマップの3D表示、結晶粒界付近や析出物内の局所的に方位差が大きいことがわかる。
図 4. KAMマップの3D表示、結晶粒界付近や析出物内の局所的に方位差が大きいことがわかる。
EDSのX線強度 Nb (赤)、Ti (緑)、Ni (青)によるRGBマップ
図 5. EDSのX線強度 Nb (赤)、Ti (緑)、Ni (青)によるRGBマップ

まとめ

このアプリケーションノートでは、 Velocity EBSD 検出器と Octane Elite EDS 検出器を最新の FIB-SEMに取り付けて、3 次元の微細構造データを収集し、 OIM Analysisで解析ならびに可視化する方法を紹介した。Velocity Ultra は最速の EBSD 収集が可能で、3D データの収集時間を大幅に短縮できる。

謝辞

3次元EBSD-EDSデータをご提供頂いた Saarland UniversityのMichael Engstler氏とChristoph Pauly氏に感謝する。