はじめに
付加製造を含む凝固を伴う加工技術の普及に伴い、微細構造および材料特性の開発における凝固の役割は、より重要となってきています。本研究では、Ezemenaka and Genauの論文(Journal of Crystal Growth 577 (2022) 126389)に基づき、方向性凝固を介して加工したAl-Cu-Mg合金を、同時に収集したエネルギー分散型X線分析(EDS)と電子線回折結晶方位解析(EBSD)により特性評価し、この三元共晶合金の相と結晶方位の関係について検討しました。
結果と考察
共晶組成(Al - 15.5 at% Cu - 10.6 at% Mg)の試料を電気炉で溶解し、ブリッジマン型炉を用いて方向性凝固させ、凝固条件を制御して安定した微細構造成長パターンを確立しました。ここに示す例は、成長高さ49mmの試料から得られたものです。まず、0.1 µmのダイヤモンドペーストで機械研磨し、次に0.05 µmのコロイダルシリカで2時間振動研磨して、凝固方向に平行な横断面をEBSD分析用に作製しました。最終的なEBSD用の調製は、Gatan製 PECS™ II ブロードビームイオンポリッシャーを使用して、2ステップのミリングルーチンが行われました。試料は、まず4 kVのアルゴンビームを4°の角度で10分間照射し、次に2 kVのビームを4°で60分間照射してミリングされました。
EBSDデータは、Clarity™ダイレクト検出器を使用して、加速電圧20 kV、ビーム電流約1 nAで収集しました。EDSデータは、Octane Elite Detectorを使用してEBSDデータと同時に収集しました。微細構造は、図1に示す3枚のPRIAS™画像で可視化されています。

図 1. 一方向に凝固させたAl-Cu-Mg共晶合金のa) 原子番号コントラストを示すPRIAS top 像、 b)チャンネリングコントラストを示すPRIAS middle 像、 c) 凹凸のコントラストを示すPRIAS bottom像

図 2. 赤色が銅、緑色がアルミニウム、青色がマグネシウムに対応するEDSのRGB マップ
図 1a のPRIAS top像は、試料の原子番号コントラストを示しています。 図 1bのPRIAS middle像は、異なる粒子と相からの方位コントラストを示しています。 図 1c のPRIAS bottom像は、調製した試料に存在する表面トポグラフィーを示しています。 この多相試料は、構成する相における異なる研磨速度によって表面トポグラフィーを示します。
図3に示すように、EDS情報は、最も正確で効率的な相マッピングのためにChI-Scan™解析に使用されました。NPAR™は、保存されたEBSDパターンとその後の指数付け結果のS/N比を改善するために、ChI-Scanの指数付けにも適用されました。相マップは、この三元共晶合金で予想される2ラメラ/1ロッドパターンの周期構造を示しています。アルミニウム相とAl2CuMg相がラメラ相を形成し、Al2Cuがロッド相を形成しています。このEBSDデータにより、各相の粒径と形態が容易に測定できます。また、中核にAl-Si-Mg相が検出されたが、これは未知のソースからの汚染に起因するものです。

図 3. 同時収集されたEDS-EBSDデータを使用してChI-Scan解析された三元共晶Al-Cu-Mg合金の相マップ
アルミニウム相、Al2CuMg相、Al2Cu相のIPF(Inverse Pole Figure)マップを図4に示します。分析面の法線方向に対して方位を色分けしています。これらの方位マップは、各構成相に強い優先配向があることを示しています。
これらの方位を解析すると、アルミニウム相の[001]結晶方向はAl2Cu相の[001]方向と平行であり、Al2CuMg相の[100]方向とも平行であることがわかります。これらの方位関係は、図5に示すように、各相のIPFマップに着色した方位をプロットすることで可視化することができます。また、図3と図4を比較すると、コアとなるAl-Si-Mg相に隣接するアルミニウム粒は、他の粒とも予想される方位関係とも乖離した方位を持っていることが観察されるのも興味深い点です。

図 4. 分析面の法線方向に対して方位を色分けしたa) Al,、b) Al2CuMg、c) Al2Cu 各相のIPFマップ

図 5. 図 4 と同じ配色で方位を色付けしたa) Al、 b) Al2CuMg、c) Al2Cu 各相のIPFプロット
まとめ
この研究では、EDS と EBSD の組み合わせを使用して、方向性凝固によって調製された複雑な三元共晶合金に存在する方位と方位関係を完全に特徴付ける方法を示しています。 Clarity、Octane Elite、ChI-Scan、および NPAR 処理を適用することで、正確な結果を得るために存在する各相から最適な EBSD パターンを指数付けできます。 試料の提供と EBSDデータの共有について、以前はアラバマ大学バーミンガム校、現在はアラバマ大学に在籍している Dominic Ezemenaka 氏に感謝します。