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Spherical indexを用いたEBSDによる炭化ケイ素多形の特性評価

はじめに

シリコンカーバイドはパワーエレクトロニクスにおいて極めて重要な材料であり、従来のシリコンベースのシステムよりも高い電圧と温度で動作する、小型・軽量・効率的なシステムの開発を可能にする。シリコンカーバイドデバイスは、高い効率と性能が求められる電気自動車、電源、太陽光発電インバータなどの用途において極めて重要である。

シリコンカーバイドは結晶構造が異なる相を形成する。シリコンカーバイドの一般的な結晶構造は立方晶系3C相( SiCβ相)、六方晶系4H相、六方晶系6H相である。これらの相は、バンドギャップ値、電子移動度、熱伝導率など、電気的および熱的特性が異なる。さらに、六方晶系4H相と6H相は、結晶方位に依存する異方性特性を有している。これらの特性がデバイスの性能を決定づけるもので、現代のパワーエレクトロニクスでは4H相が好まれている。

これらの多形は同じ化学組成であるため、後方散乱電子 (BSE) イメージングやエネルギー分散分光法 (EDS) では検出や区別が困難である。電子後方散乱回折 (EBSD) は、結晶学的な情報を基に相を分離するための理想的なツールである。しかし、シリコンカーバイドの場合、相、特に 4H 相と 6H 相の違いはわずかで、従来のHough変換による指数付けでは相分離を行うことは難しい。これは、各相の積層順序が異なるためで、Si-C 二重層が c 軸に沿って 3 つの位置のいずれかで積層される。3C 相では、3 層ごとに A-B-C 積層順序が繰り返される。4H 相では、4 層ごとに A-B-A-C 積層順序が繰り返される。6H 相では、6 層ごとに A-B-C-A-C-B 積層順序が繰り返される。

これらの積層順序により、4Hと6Hで類似したEBSDパターンが得られ、特定の結晶方位において、一部の回折面は共通のままとなる。これらのバンドがHough変換で検出される場合、Hough変換による指数付けではこれらの相を確実に区別することが困難になる。Hough変換による指数付けは、指数付けに用いられる回折面に相分離に有効な結晶面を追加し、4Hと6Hで異なるバンドを検出するために十分な数のバンドを検出することで最適化できる可能性もあるが、難易度は高い分離となる。

a) 4H相とb) 6H相の実際に収集したEBSDパターンとSpherical indexの結果 試料と結果
図 1. a) 4H相とb) 6H相の実際に収集したEBSDパターンとSpherical indexの結果

試料と結果

4Hと6Hの相分離はSpherical index用いることで容易に相分離を行うことができる。Spherical indexでは、これら 3 つのSiC相それぞれについて、動的回折の効果を取り入れたEBSDパターンシミュレーションにてマスター パターンを生成した。次に、EDAX® Velocity™ Ultra 検出器で取得され実際に収集された EBSD パターンをこれらのマスター パターンに対して指数付けを行い、結晶方位と相をSpherical Indexによる指数付けにより決定した。Spherical indexの利点は、収集した EBSD パターンの細かい構造を利用することができるため、4Hと6Hのより小さく微妙な変化を使用して相を区別できるようになることである。図 1 a は、実際に収集した EBSD パターンと 4H 相のSpherical indexの結果を示しており、3C および 6H の場合の結果も示されている。図 1b は、6H 相の結果を示しており、明確に6Hと一致していることが分かる。

多結晶シリコンカーバイド試料からEBSDマッピングデータを収集し、すべてのEBSDパターンを保存した。これらのパターンをSpherical indexを用いて指数付けを行い、相分離・結晶方位を決定した。図2は、SCI 0.2以上のフィルターを使用した場合の指数付け成功率97.2%のEBSD相マップを示している。分析対象領域の75%が6H相、14%が4H相、11%が3C相と同定された。

SCI >0.2 フィルターを使用した、97.2% の指数付け成功率の EBSD 相マップ。分析された領域の 75% が 6H 、14% が 4H、11% が 3C であると相判定された。
図 2. SCI >0.2 フィルターを使用した、97.2% の指数付け成功率の EBSD 相マップ。分析された領域の 75% が 6H 、14% が 4H、11% が 3C であると相判定された。

図3はEBSD逆極点図(IPF)方位マップを示しており、A3方向の結晶面を表している。EBSDがSiCの相分離にてX線回折と比較して優れた点の一つは、空間的に特定された方位データを用いて、結晶粒径と粒界特性の解析ができることである。このようなより詳細な材料微細組織のデータから、材料特性やデバイス性能と微細組織との相関性を高めることができるようになる。

試料の法線方向を基準に結晶方位を色分け表示したEBSD IPF方位マップ、六方晶系6H相、4H相、および立方晶系3C相に対応するカラーキーを用いて方位を識別 まとめ
図 3. 試料の法線方向を基準に結晶方位を色分け表示したEBSD IPF方位マップ、六方晶系6H相、4H相、および立方晶系3C相に対応するカラーキーを用いて方位を識別

まとめ

EBSDのSpherical index法は、様々な炭化ケイ素多形の結晶の相と方位を測定するのに最適です。Spherical indexのプロセスにおいて、EBSDパターン情報全体とシミュレーションされたEBSDマスターパターンを比較することで、相の識別が最適化されます。

謝辞

データをご提供いただいたIng. Samanwitha Kolli, Department of Materials Engineering, KU Leuvenに感謝いたします。