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ChI-Scan — 多相試料中の微細構造の定量的理解への近道

はじめに

試料に含まれる化合物や相の微細構造を解析することで、加工履歴と材料特性との関係を明らかにすることができます。過去20年以上にわたって、エネルギー分散型X線分析(EDS)と電子線回折結晶方位解析(EBSD)は、特性を改善した材料を開発するための貴重なツールであることが証明されています。しかし、これらの技術は単独で実施されることが多く、分析の効果を著しく低下させたり、答えが出るまでの時間を大幅に増加させたり、より高度な専門知識を必要としたりしています。Chemical Indexing Scan(ChI-Scan™)は、EDSから得られる元素情報によりEBSDによる結晶構造解析を正確に行え、存在するすべての相の集合体および個々の相の正確な微細構造分析が自動的に行えます。

ChI-Scanの利点

  • 同じ立方晶構造で類似の格子定数を持つ相を区別します
  • 同じ結晶構造で異なる格子定数を持つ相を区別する場合、データ収集時間を数時間から数分に短縮します
  • 試料調製や塑性変形による解析の曖昧さを避けることができます
  • 適格な結晶構造に基づくガイド付き分析により、処理時間を10分の1に短縮します
  • 試料に存在するすべての相を分析します

ChI-Scan解析により多相鉱物の集合組織を明らかにします。ChI-Scanを使用して、鉄含有量の変化から2つの異なる菱マンガン鉱相が発見されました(左)。 フェーズマップ(中央)は、鉄含有量が低い菱マンガン鉱(シアン)、鉄含有量が高い菱マンガン鉱(黄色)、および硫酸バリウム(青)、石英(赤)、黄鉄鉱(緑)などの他の相を示しています。 同じ試料のImage Quality像と重ね合わせたIPF方位マップ(右)。
図 1. ChI-Scan解析により多相鉱物の集合組織を明らかにします。ChI-Scanを使用して、鉄含有量の変化から2つの異なる菱マンガン鉱相が発見されました(左)。 フェーズマップ(中央)は、鉄含有量が低い菱マンガン鉱(シアン)、鉄含有量が高い菱マンガン鉱(黄色)、および硫酸バリウム(青)、石英(赤)、黄鉄鉱(緑)などの他の相を示しています。 同じ試料のImage Quality像と重ね合わせたIPF方位マップ(右)。

 

ChI-Scan

EBSDは、試料の分析位置の結晶構造と方位を識別し、詳細な微細構造情報を明らかにします。 しかし、類似の結晶構造を持つ2つ以上の相が試料に存在する場合、正しい構造を一意に識別することが難しい場合があります。 ChI-Scanは、EDSからの組成情報を利用して、各測定位置での結晶構造の候補を、適切な元素組成を持つものだけに減らすことであいまいさを解決します。 これにより、高品質のEBSDデータ(信号ノイズ比と分解能)の要件が緩和され、類似した結晶構造の相を識別し、データ収集を高速化できます。 ChI-Scanを使用することで、10以上の相を持つ微細構造が分析することができました。

マイクロアナリシス結果

この例では、プリント回路基板の金属相互接続の微細構造分析におけるChI-Scanの重要性が示されました。相互接続は、銅とコバールの多段階電気化学的堆積を使用して堆積されました。コバールは、ホウケイ酸ガラスと同様の熱膨張係数を持つ鉄ニッケルコバルト合金です。これは、エレクトロニクス業界では、硬質ガラスに接合された金属部品に使用されています。2つの材料の特性に対する処理の影響を理解および制御するには、それらの微細構造、特に粒度分布を理解することが重要です。

単独で測定した場合、Velocity™Plus EBSD検出器を使用したEBSD分析は、ポイントの99.8%を正常に指数付けし、粒子サイズ、結晶方位、双晶境界などの詳細な微細構造情報を明らかにする高品質の方位マップを提供します。 しかし、これらの2つの相の間の結晶構造の類似性のために、各相の微細構造とそれらの関係を理解することは不可能でした。 相マップは、銅とコバールに対応する2つの面心立方(FCC)相のランダムな選択を示していますが、観察された微細構造の特徴との相関はありません。 銅とコバールは、同一の回折面と類似の格子定数を持つFCC材料であるため、EBSDでの区別が非常に困難です。

  EBSD   EDS   相マップ
EBSD EBSD方位マップは、Velocity Plus EBSD検出器にて3,000点/秒以上で収集しました。 + = 相マップはデータから決定されました。Cu(上–青, 下–オレンジ) とコバール (上-黄, 下-緑)
 
ChI-Scan EBSD方位マップは、Velocity Plus EBSD検出器にて3,000点/秒以上で収集しました。 + EDS 元素マップは、Octane Elect Super検出器で EBSD と同時に収集しました 。Cu(赤), Fe(緑), Ni(青) = 相マップはデータから決定されました。Cu(上–青, 下–オレンジ) とコバール (上-黄, 下-緑)
  表 1. EBSD方位マップは、Velocity Plus EBSD検出器にて3,000点/秒以上で収集しました。   EDS 元素マップは、Octane Elect Super検出器で EBSD と同時に収集しました 。Cu(赤), Fe(緑), Ni(青)   相マップはデータから決定されました。Cu(上–青, 下–オレンジ) とコバール (上-黄, 下-緑)

 

しかし、ChI-Scanによる元素マップの収集と分析を同時に行うことで、銅とコバールを区別して正確な相マップを取得でき、定量的な微細構造分析が可能になりました。両方の相の結晶粒サイズ分布を図2に示します。

銅の相は、コバール界面に隣接する大きな結晶粒とそれから離れた小さな結晶粒を伴う二峰性の結晶粒サイズ分布を有し、2つの異なる堆積および結晶粒成長メカニズムが堆積プロセス中に活性であったことを示唆しています。コバールの相は、より均一な結晶粒分布です。 結晶粒の方位差の分析は、コバールの相が有意な双晶であることを示しています(相内の結晶粒界の約50%)。銅の相の双晶境界ははるかに少ないことが分かります(約7%)。このような詳細な解析は、ChI-Scanが提供する正確な相分析なしでは不可能です。

Cu相 (左) とコバール相(右) のEBSD結晶粒マップ、Cu相の二峰性結晶粒構造を示しています。
図 2. Cu相 (左) とコバール相(右) のEBSD結晶粒マップ、Cu相の二峰性結晶粒構造を示しています。

 

Cu相 (青) とコバール相(赤) の結晶粒度分布
図 3. Cu相 (青) とコバール相(赤) の結晶粒度分布

 

まとめ

EDAX Pegasus SystemsのChI-Scan機能により、次のことが可能になります:

  • EBSDパターン分析のあいまいさを排除することにより、多相材料を解析するユーザー向けの正確な相マッピング
  • 低品質のEBSDパターンの使用を可能にすることにより、重要なデータの迅速な解析
  • 材料中の全ての相を定量的に解析するための分析機能の向上

ChI-Scanは金属、セラミック、半導体、地質学的サンプルに使用でき、鋼鉄中の炭化物分析、希土類磁石中の酸化物相の識別、航空宇宙合金中の含有物分析、銅鉱石中の鉱物分析などが含まれます(ただしこれらに限定されるものではありません)。

ChI-Scanは、EDAX社のEDS検出器とEBSD検出器で得られたEDS/EBSD同時分析データが必要です。