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EDS–EBSDインテグレーションによる完全な特性評価

はじめに

エネルギー分散型X線分析(EDS)と電子線回折結晶方位解析(EBSD)のインテグレーションシステムは、EDAX Pegasusシステムと呼ばれ、ユーザーが試料の完全な特性を簡単かつ効率的に取得できます。インテグレーションシステムのEDSは元素組成に関する情報を提供し、EBSDは結晶構造と方位に関する情報を提供します。APEXソフトウェアは、EDS-EBSD共通のユーザーインターフェイスのため、ソフトウェア操作の一貫性が保たれます。EDSとEBSDのデータは1クリックで同時に収集できます。 EBSD分析のために、試料の前処理が必要です。Pegasusシステムのデフォルトとして、EDS検出器、EBSD検出器は、両方が同じ分析位置を測定できるようなジオメトリーで構成する必要があります。同時収集では、EDS/EBSDデータは、同じ位置から同時にマッピングされ、2つの信号の最適な相関が得られます。このアプリケーションノートでは、完全な特性評価のためにインテグレーションされたEDS-EBSDで得られたデータを示します。

結果と考察

EDS-EBSD同時分析データは、Octane Elite Plus EDS検出器とVelocity Super EBSD検出器を使用して、高エントロピー合金(HEA)フィラーでろう付けされたニッケル合金から収集しました。この試料は、Colorado School of MinesのBenjamin Schneidermanとhenzhen Yu教授からご提供頂きました。図1はグレースケールで表示されたイメージクオリティー像(IQ)とカラー表示された逆極点図(IPF)方位マップ(紙面の法線方向がND)を重ね合わせたEBSDマップを示しています。 さらに、試料内の双晶境界は白い線で示します。ニッケル合金とHEAフィラーはどちらも面心立方構造です。

図1.グレースケール表示のイメージクオリティー像(IQ)とカラー表示の逆極点図(IPF)方位マップ(紙面の法線方向がND)を重ね合わせたEBSDマップ
図1.グレースケール表示のイメージクオリティー像(IQ)とカラー表示の逆極点図(IPF)方位マップ(紙面の法線方向がND)を重ね合わせたEBSDマップ

 

この画像は、画像の中央に水平方向のろう付け線を示しており、視野の上部と下部にニッケル合金があります。ニッケル合金の結晶粒径は非常に大きく、双晶境界の割合が高くなっていますが、HEAフィラーの結晶粒径は小さく、双晶の割合は最小限です。Ni-HEA界面に双晶を持つ小さな粒子の遷移領域もあります。この情報は、EBSD解析で通常得られます。

図2.a) EBSDデータと同時に収集したニッケルのEDS元素マップ。単色強度はピクセルあたりのEDSカウント数を示す。b) ニッケル濃度の3つの領域を強調するサーマルカラーパレット表示。ニッケル合金のNi濃度が高い領域、HEAフィラーのNi濃度が低い領域、ろう付けされた中央のNi空乏領域
図2.a) EBSDデータと同時に収集したニッケルのEDS元素マップ。単色強度はピクセルあたりのEDSカウント数を示す。b) ニッケル濃度の3つの領域を強調するサーマルカラーパレット表示。ニッケル合金のNi濃度が高い領域、HEAフィラーのNi濃度が低い領域、ろう付けされた中央のNi空乏領域

 

図2aは、EBSDデータと同時に収集したニッケルのEDS元素マップです。単色強度はピクセルあたりのEDSカウント数を示しています。この画像は、HEAろう付け部のニッケル濃度の低下を示しています。図2bに示すように、さまざまなカラーパレットでこれらの濃度勾配を強調できます。ここでは、サーマルパレットを使い、ニッケル濃度の3つの領域が強調されています。ニッケル合金のニッケル高濃度領域、HEAフィラーのニッケル低濃度領域、ろう付けの中央のニッケル空乏領域です。図3に示すように、複数のEDS元素マップを1つの画像に合成することもできます。RGB画像では、赤はニッケルの強度を示し、緑は酸素の強度を示し、青はコバルトの強度を示します。この画像は、HEAフィラーのコバルト濃度が高く、酸素の多い領域がニッケルの少ない領域に対応していることを示しています。この情報は通常、EDS分析で得られます。

図3.EDSのRGB合成像。赤はニッケル強度、緑は酸素強度、青はコバルト強度を示す
図3.EDSのRGB合成像。赤はニッケル強度、緑は酸素強度、青はコバルト強度を示す

 

インテグレーションされたEDS-EBSD分析の相乗効果のいくつかを図4に示します。EDSのRGB合成像は図3と同じです。同時収集のEBSDデータから得られた粒界粒界の情報も示され、双晶境界は白い線で、ランダムな高角度粒界を黒い線で表示します。この情報により、微細構造の化学組成と結晶構造を直接相関させ解析することができます。この例は、Ni-HEA界面のいくつかの結晶粒が組成勾配を持っていることを示しています。 このインテグレーションされたEDS-EBSDデータにより、ろう付けプロセス中にアクティブになる可能性のある拡散、結晶粒の核形成と成長、および双晶メカニズムをよりよく理解できます。

図4.図3と同じEDS合成像に、同時収集されたEBSDの結晶粒界データを追加したRGBマップ
図4.図3と同じEDS合成像に、同時収集されたEBSDの結晶粒界データを追加したRGBマップ

 

図5.ろう付け領域の中心部の高倍率IQ像
図5.ろう付け領域の中心部の高倍率IQ像

 

Pegasusシステムには、インテグレートされたEDS-EBSD分析を次のレベルに引き上げるための高度なツールも含まれています。図5は、ろう付け領域の中央部の高倍率のIQ像を示しています。この画像は、微細構造内の複数の小さな析出物を示しています。EBSD情報は、ほとんどの析出物が結晶粒界に沿って位置していることを示していますが、析出物のごく一部が結晶内に位置しています。インテグレーションされたEDS-EBSD情報を使用して、粒子平均EDS濃度を決定し、これらの析出物をより適切に識別および特性評価できなす。このアプローチにより、EDSデータ内のノイズが大幅に減少します。次に、この情報をChI-Scan™分析に使用できます。この分析では平均化されたEDS情報を使用して、結晶構造が類似した相を区別します。得られた相マップを図6に示します。この分析により、各析出物は組成と結晶構造について完全に特徴付けられ、この情報を使用して、ろう付け中にさまざまな析出物がどのように発生したかをより正確に理解できます。

図6.ChI-Scanで解析された相マップ
図6.ChI-Scanで解析された相マップ

 

まとめ

インテグレーションされたEDS-EBSD分析は、微細構造を特性評価するための強力なツールであり、APEXソフトウェアを介して簡単に利用できるため、材料分析をすばやく簡単に行うことができます。