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微小部蛍光X線分析装置(Micro-XRF)を使用した宝石の非破壊真贋鑑定

はじめに

宝石の真贋と品質の検証は、対象物の価値を評価するために必要です。多くの宝石は、驚くべき品質でかなりの大きさに、人工的に合成することができます。貴重な価値を持つ可能性のある宝石に対して破壊検査を行うと、その価値が下がってしまうため、真贋鑑定は非破壊で行うことが不可欠です。

微小部蛍光X線分析装置(micro-XRF)は、宝石を非接触・非破壊で鑑定することに適した技術です。この技術では、X線管球からのX線を試料に照射します。X線を試料に照射すると、試料が励起され、元素ごとに固有の蛍光X線が発生します。蛍光X線は、試料の数十から数百ミクロンの範囲で励起され、物質の元素組成を知る上で重要な情報となります。試料はコーティングやその他の破壊的な前処理を行うことなく、そのまま分析することができます。これは貴重な宝石の検査には重要なことです。

測定装置

測定には、EDAX Orbis PC 微小部蛍光X線分析装置を使用しました。50W X線管球(Rhターゲット)を搭載し、大気中または真空中での元素分析が可能です。ビデオ光学系とX線光学系を統合した電動ターレットにより、試料の観察とX線分析を同軸上で行うことができます。このジオメトリーは、試料上の測定位置精度を高く保ちながら、X線ビームのシャドーイングを防止します。おおよその分析位置決めには10倍カラーCCDカメラを使用し、X線ビーム下の正確な位置決めには3倍デジタルズーム付き75倍カラーCCDカメラを使用します。30µmφの高輝度ポリキャピラリX線光学系は、高感度の収束マイクロスポットX線ビームを生成し、1 mmφと2 mmφのコリメーターは、より広い範囲に均一なビームを照射する際に使用します。検出限界の向上や回折ピークの低減のために、すべてのX線スポットサイズにおいて一次ビームフィルターを使用することができます。また、大面積のシリコンドリフト検出器(SDD)により、液体窒素を使わずに高感度で分析ができます。

測定結果

真珠は牡蠣が作り出す有機物の宝石です。真珠は、牡蠣を刺激する小さな種子粒子を囲む炭酸カルシウムの層で構成されています。炭酸カルシウムのコーティングは、刺激物から自分自身を保護するための方法です。真珠の中には微量なSrが検出されます。Srは天然格子でCaの代わりとなる物質で、海水中に低濃度で含まれています。イミテーション真珠は、通常プラスチックにカラーコーティングを施したものです。真珠のような効果を出すための着色料としては、オキシ塩化ビスマスがよく使われます。したがって、天然の真珠(または養殖の真珠)のmicro-XRFスペクトルには、CaとSrのピークが見られるはずです。イミテーション真珠のスペクトルには、Caのピークは見られず、Biのピークのような着色剤の特徴的なピークが予想されます。

今回の鑑定では、4つの真珠の試料を使用しました(図1)。(1)イヤリング、(2)ブレスレット、(3)ネックレス、(4)チェーン・ブレスレットです。これらのサンプルをOrbis PCサンプルステージに装填し、真空モード、X線管電圧40kVで分析しました。X線管電流、アンプタイム、取り込み時間を同じにして、各サンプルのビーズに1つのスペクトルを収集しました。ビーズ上の比較的広い領域をカバーするために、1 mmのコリメータを選択しました。

図1.真珠の試料 左から右へ(1)イヤリング、(2)ブレスレット、(3)ネックレス、(4)チェーン・ブレスレット
図1.真珠の試料 左から右へ(1)イヤリング、(2)ブレスレット、(3)ネックレス、(4)チェーン・ブレスレット

 

すべての試料のスペクトルを重ねてみると(図2、3)、試料1~3には高いCaのピークと、小さなSrのピークが見られ、これらの真珠が本物であることがわかります。試料4のスペクトルには、Caのピークはなく、Biのピークが観測されます。これはイミテーション真珠で、キラキラとした真珠のような外観はオキシ塩化ビスマスによるものです。試料4のスペクトルに見られるCuのピークは、様々な色を出すための顔料として一般的に使用されている酸化銅によるものと思われます。

図2.試料1 (赤)、2 (シアン)、3 (オレンジ)、4 (茶)のX線スペクトラム重ね合わせ
図2.試料1 (赤)、2 (シアン)、3 (オレンジ)、4 (茶)のX線スペクトラム重ね合わせ

 

図3.図2のスペクトラムを垂直方向に拡大
図3.図2のスペクトラムを垂直方向に拡大

 

まとめ

微小部蛍光X線分析装置は、価値の高い様々な宝石の真贋判定に利用できます。この例では、Orbis PC 微小部蛍光X分析装置を使用して真珠の真贋鑑定を行いました。X線ビームは試料にビームダメージを与えず、前処理も必要としないため、真贋鑑定は迅速かつ非破壊的で行うことができました。迅速な分析では、真珠に含まれる主要元素と微量元素、およびイミテーション真珠のカラーコーティングに含まれる元素を測定することで、容易に真贋を鑑定することができました。